「東京時層空間|Tokyo TIME DIMENSION」2020年6月16日(火)~6月30日(火)

2020.05.28

テトカでは、6月16日(火)~6月30日(火)の会期で「東京時層空間|Tokyo TIME DIMENSION」Koji Tsukada and Photographersを開催致します。

イントロダクション
緊急事態宣言発令後の2020年4月の終わり、私は有り余った時間の消化と運動不足解消のために夕刻になると食材の調達も兼ねて自宅近辺を徘徊していた。

普段とは全く違う街の様子に不謹慎ながらも興奮を覚える。特に著しい変化を遂げたのは駅から自宅への最短コースとして必ず通る五反田有楽街だった。普段は客引きと目を合わさぬよう足早に通りすぎる一角を、今日は遠慮する必要もないのでまじまじと店の入り口に近づきその様子を伺う。「只今の料金」「SYSTEM」の文字、灯る事のないLEDの電飾、格子のシャッターの奥には営業自粛を知らせる張り紙、再開の予定については記されていない。

夕日に照らされて顕になった建物の躯体は廃墟そのものだった。

しばらくすると遠くで確実にダンスビートだとわかる4つ打ちの低音が響いていることに気づく。久しく味わっていないフェスやクラブの高揚の感覚がその音をきっかけに呼び覚まされる。

耳を済まさないと聴こえない程度だがかなりの大音量で鳴っているにちがいない。音の方角を確認しながら路地を突き進んでいくと徐々に音は鮮明になりやがて曲として耳に入ってくる。その曲がDuaLipaのDon’t Start Nowだと気がつく、するとまもなく音の発生源を発見した。有楽街の突き当りにあるレンガのビルの地下だった。

B1↓入り口と書かれた奥には蛍光灯の明かり、中を覗き込むとピンクの「18」の文字が書かれたカーテン。どうやら営業している店のようだ。するとカーテンの奥から男女の声が聴こえてくる。その声が徐々に近づいてくるので私はおもわずその場を離れてしまった。

ダンスビートの中から現れた彼らを眺めていると、なんだか違う時空からやってきた人間の様に思えてきた。

「また来てくれるの?」そんな別れを惜しむような会話をしているのだろうか?

やがて女は階段の奥へ、男は駅の方角へと消えた。私は家に向かって歩きながら、コロナ禍においても繰り返される太古の人間の営みを垣間見たことに不思議な感動を覚えた。

カーテンの向こうは吉原、もしくは平安京に繋がっているのかもしれない、そんな妄想も浮かび上がってくる。そして音楽を生業とする身としてそこに音楽が必要不可欠なものとして存在している事がなんだか嬉しく、なにか一つの希望の様にも思えた。

その事をきっかけに、コロナ禍で人間の経済活動が淘汰されたノイズのない世界は、太古の人間が置かれていた環境に限りなく近いのではないか?という感覚にとらわれはじめる。

街の中で目を閉じて耳を澄ませば、芝浜の時の鐘が、吉原の明烏が、芭蕉が愛した蛙や蝉の声が、もはや妄想や幻聴ではなく実際にクリアーに聴き取る事が可能なのではないか? 誰もいない寺の木々や鳥たちは江戸町人が見ていたものと限りなく近いのではないか?

これほど見事に都市で太古の音や風景が再現される機会はもうないかもしれない。その日からモバイルレコーダーとカメラを片手に街を徘徊することにした。

今回の展示はその実際のフィールドレコーディング、そこから派生したいくつかのコンポジション。私と同じくカメラを手にコロナ禍の街でシャッターを切った写真家の作品を元に構成する。

都市のノイズに埋没してしまった音に耳を澄まそう。コンクリートの向こう側に太古の風景を発見しよう。そしてDNAに刻まれた感覚との交信を試みる。 東京自層空間へようこそ。

企画・音楽・テキスト・カバー写真|塚田耕司
https://www.instagram.com/tsukada_koji/

参加作家
大森克己
https://www.instagram.com/omorikatsumi/
山本ムーグ
https://note.com/m000g
マジック・コバヤシ
https://www.instagram.com/galleryandspicyfoods_p/
寺沢美遊
https://www.instagram.com/mieuxxx_/
梶野彰一
https://www.instagram.com/casinodeparis/

デザイン・構成|手塚敦嗣
https://www.instagram.com/flaneur.form/

展覧会概要
展覧会名:「東京時層空間|Tokyo TIME DIMENSION」Koji Tsukada and Photographers
会期:6月16日(火)~6月30日(火)
営業時間:16:00〜22:00
※社会情勢を鑑みまして、開催の有無、開店時間の変更など、来店前にテトカWEBでご確認下さい。
休廊日:水曜日
会場:手と花|TETOKA
住所:東京都千代田区神田司町2-16-8.1F
Tel : 03-5577-5309

[ テトカの新型コロナウィルス対策 ]
テトカでは、次亜塩素酸水生成機エルビーノを設置導入いたしました。営業中、店舗入口の引き戸を開け放して空気の循環に努めます。
店舗前に次亜塩素酸水除菌スプレーを置き、入店時のお客様に除菌を促し、店舗内は次亜塩素酸水噴霧器にて空間除菌に努めます。来場されます皆様もマスク着用をお願い致します。ペットボトルをご持参頂けましたら、次亜塩素酸水をお持ち帰りいただけます。